アイデアのスープのレシピ

ナショナルデパートが作られる現場のレシピ

ふりかえってみる

満身創痍のスリップピール

パンをオーブンの中に入れる道具「スリップピール」のリベットが折れて、新しいものと交換した。もともとは銅色の合金リベットだったが、ステンレスのナットに差し替えた。これで当分はもつだろうな。普通3~4kg程度のパンを乗せて使うスリップピールに、20~25kgもの重さのパンを乗せて使うから、金属疲労のスピードが速い。過去に何度も補強材を入れている。ハンドル部分がアルミなので、次はそこが折れそうな予感がする。このオーブンを導入して、まだ1年半くらいだが、どれだけのパンを焼いてきたのだろうか。

こうやって店の中を眺めているだけでも、いろいろと思い出されることがある。もともとはカフェだったものを工場に変えていくの結構大変だし時間がかかったな。設備を揃えれば工場の体裁は出来るが、商品の製造と流通だけで成り立つようになるまで5年もかかってしまった。8年前にカフェとして開業した店舗も、いまでは立派な工場設備になった。この5年間でいろいろな製品を開発したし、徐々に独自の市場も築きつつある。このオーブンは製造設備に特化する起点となった大切なオーブンだ。

大好きなシャンデリア

3ヶ月という短命に終わった2号店用に買い求めたシャンデリア。今は天神町の工場に付けられている。シャンデリアをみていると、故郷に帰ったような安堵感を感じる。なんか昔にこういう光景を見ていたんだろうか、不思議な感覚だ。仕込みをしている最中にも、ふとシャンデリアを見ることがある。

製パンという単純な作業の中でも、心の中までブルーカラーに染まらないように日々気をつけている。誰の真似もせず自分のオリジンだけで製品を開発するには、製パンにどっぷり浸かっていては、何もなし得ない。「本当にこんなもの作って人のためになるのか?」という自問に暮れる日々で、シャンデリアのように「特に必要のないもの」が与えてくれる豊かさとか幸福感は、なんとなく勇気をくれているような気がする。

新しくなった天神町店のカウンター

そういえば、天神町の工場の販売カウンターも新調した。5年前に比べると売り場の面積は5分の1程度まで圧縮された。おそらく売り場面積は2坪も無いのではないだろうか。多い時はここに同時に10名ほどのお客さんが並んでパンの説明を受ける。殺風景な場所だが、僕はこんな感じの方が落ち着く。

最新のレジスターと食品表示シールの印刷機を導入したのは、問屋町店を開店する時がきっかけ。通販の在庫管理を効率的にするためだが、まだ、システムとして十分には機能していないように感じる。人数が少ない分、多くの作業をもっと自動化していかなければいけない。今後の課題だ。

もはや伝統の域に入りつつある看板

訪れた人、通りがかる人、全ての人が気になるという看板。大きく「ぱん」とだけ書かれている。開業当初はフランス語やらいろいろ書いていたが年配のお客さんが多いので、あまり意味が無いことに気づいた。2年前からこの看板を使い続けているが、風雪にさらされ幾度となく転倒した結果ボロボロになってしまっている。なんだか入りにくいと言われるナショナルデパートの店構えの中で、唯一ホッとさせるもののひとつ。

パン焼きの道具たち

少しずつ買い足してきた道具類も増えてきた。これからも徐々に増えるんだろうな。新しいことをこれからも試していきたいが、こういった古くからある道具も大切に使っていきたい。もう何百年も形を変えずに伝えられているこれら道具たち。そこからどうやって新しいものを生み出すかが僕の仕事なわけだ。

別に意味も無く振り返ってみたが、何年も続けていると何気ない光景を見落としていたりする。昔はこういう考えでやっていたけど、今はどうなの?とか。そういう感じで見つめなおすのもたまには良いのかな。まあ、そんな感じだ。