アイデアのスープのレシピ

ナショナルデパートが作られる現場のレシピ

ナショナルデパート東京高円寺は21世紀の場末感を集約したヒデシマ店舗デザインの最高傑作。

ナショナルデパート高円寺店の外観

なんともいえない場末感がでてますねえ。高円寺になかなか行けないという方、ということで高円寺店の画像をどうぞ。一部では有名な「ぱん」の看板、寄り添うように立つ貼り紙や落書きで汚された電柱。カバーのかけられた大家さんの息子さんの自転車。生活感あふれる空間に石造りのビルが建っていて、もともと事務所だった1階のワイヤー入りのサッシにはちょろちょろとポスターが貼られている。外装は一切改装していない。内装は昭和のラブホテルをイメージしたコテコテの壁紙を三種類、足元は赤いカーペット、天井は事務所だった時そのまま。店内の真ん中にはギリシャ神殿の生け贄を捧げる台をモチーフにした純白の販売什器。すべてがバランスを欠き、すべての要素から場末感が漂う。

それがナショナルデパート東京 高円寺。

通る人は歩みを止めて見入り、興味をそそられてなんども前を通り過ぎる。通行人が「なんだろうか」口々にそう言っているのが分かる。メインストリートからかなり離れた裏通り。ひと気も多くないこの場所で、近所の人やいろいろな人に支えられて1年。違和感や異物感を振りまきながら愛されるという異様な光景をここに確立した。

常に新鮮に朽ちている状態を保つ。古くも新しくもない、流行を追わない、トラッド過ぎたりパン屋っぽく観念的にならないよう気をつけて、受け手の温度を無視しているようだけど、なんとなく気になる。で、店に入ってもらえる。新しいものは新しい売り方で。という考えを捨てて、新しいものを普通に感じてもらう、決して普通のものに化粧をして新しく見せるということはしないでおこう。これが社是のひとつ「不易流行」の実践としてある。

誰も見たことのないもの、世界のどこにも存在しないものを、いかにして「花は野にあるように」見せるか。ここに今回のテーマ「場末感」が生かされている。きっとあなたも気になるだろう。何度も通り過ぎて、やがて勇気を振り絞って店に入る。そして目を輝かせながら色とりどりのカンパーニュの入った袋を手に取るだろう。あなたの毎日はそのパンによって今日から変わる。