アイデアのスープのレシピ

ナショナルデパートが作られる現場のレシピ

デザインと中小・零細企業との関係。

先日twitterであべたみおさんの書かれていた言葉が、中小・零細企業とデザインのかかわり方についてかなり端的に言い表していたのでちょっと書きます。

@abetamio あべたみお
知られているのにイマイチ垢抜けない企業はCI、VIを整理するだけでもブランド力上がりますよ。見せ方を魅せ方に変えられます。それが出来るのがグラフィックデザイナーやアートディレクターです。
http://twitter.com/#!/abetamio/status/12408295910277120

という感じなんですがみなさんどう言う感想をお持ちでしょうか。
とは言っても僕は現在デザイナーではないのでね、ここでデザインについて語ろうとかそういうことでは無いんですが。有名なデザイナーさんやアートディレクターさんの言うデザインという高尚な意味のものもあるかも知れませんが、だいたい世の中にデザインが含まれないものは無いわけです。どんなものにもデザインというものが含まれます。

パリコレでスポットライトを浴びるオートクチュールから、近所のおばさんが趣味で始めた白い鯛焼きのお店のスタンプカードまで、デザインというのは陰に日向に潜んでいるわけですよ。 飲食店などはお店を開店するときにロゴマークやショップカードなど結構身近にデザインというのがあるのかも知れません。気軽なイタリアンなら陽気なおじさんがコックコート着て歌ってるようなイラストとか、ちょっと高級なイタリアンなら筆記体でインクがにじんだような感じで店名を書くとか、居酒屋なら毛筆の肉筆で温かみとか擦れた感じで勢いとか賑わいを出すということもありますね。ラーメン屋にいたってはもう手描きの「あいだみつお風」で行くしかないというくらい鉄板な感じです。

で、これが会社(飲食店では無い)となると、どうしていいか分からなくなる経営者の方も多いかも知れません。最近のIT関係の企業だと、企業のインターフェイスとしてWEBページとかデザインが関わる要素が多いので自然とデザインというものに慣れ親しんでいる感じがします。でも古くからある業態の企業の場合はデザインにお金を使うということに及び腰になることも多いかも知れません。

で、デザインがどうして企業に必要なのかというのは先に引用したあべたみおさんの言葉で事足りると思うんでね、どういう企業にどういうデザインが必要なのかということを。怪しい健康食品とかマルチ商法とかってカタログとかパンフレットとか無駄に整備されてますよね、これがデザインのひとつの作用を表しているというか、まあ、信用がつくわけですよ会社に。だから信用されてないから信用されるようになりたい場合はカチッとしたデザイン、お固いイメージの会社だと思われてるから少しでも明るくて身近な印象を持ってもらいたい時にはくだけたデザインとか、それぞれの企業において「デザインで補える部分」というのが存在しているんです。で、そのデザインで補える部分というのは、同時に「デザインでしか補えない部分」であったりもします。例えばロゴマークを変える時、ロゴマークを変えて得られる印象の変化というのは、ロゴマークを変えること以外では得られないわけです。

ナショナルデパートの場合、デザインというのがどのように作用しているかという例を一つ。 ウチの場合、ホームページを見て知る人というのが多いのですが、けっこうみなさん驚かれるみたいですね。なんだかパン屋さんというよりネジとかナイロン製品を作っている会社のようにも見えます。規模も結構な会社のように感じられるでしょう。それに全国のデパートやDEAN&DELUCAと取引があって、さぞかし立派な企業なんだろうなあ、お店も立派なんだろうなあと感じられるようです。で、実際に高円寺のお店に来ると「えっ?」と狐につままれたような顔をします。社長の僕とワイフの他、正社員ゼロ、フルタイムのアルバイトが1人、月1とか週2~3日のアルバイトが6人。でもしっかりと信用があります。どうしてでしょうか。すべてがデザインのおかげというわけではありません。でも、企業としての進む道とデザインがフィットしていることが心地よさを生んでいるかも知れません。

僕ももう若くないので、「俺って若いのにこんなにやってるんだぜ」というノリではなくて、しっとりとした大人のデザインというのを心がけています。若さというのは年月とともに過ぎ去っていくわけですから、それは企業のデザインとしても同じだと思っています。ウチの場合は大きな取引先と関係を持って自慢するレベルではなくて、ナショナルデパートが新しい時代を作っていくという頭のおかしい考え方なので、デザインぐらいは既存の大手と並んでおこうよというつもりですがどうでしょうか。





上は僕の名刺なんですが、いたって普通ですね。なんの変哲も無いものです。何回か変更しましたが決まりというのがあって、上質紙の180kgか135kg、オモテ面は英字表記の社名ロゴを白く抜いて背景はC35%。このC35%という色は僕の描く絵本でよく使われる背景の色と似せてあります。何を考えて作ったかと言えば、個性が出ないように心がけたくらいです。名前のよみがなもローマ字ではなくてひらがなにしてあります。これは海外の人との接触はメールくらいなので実際に会うこととかはまず無いからです。

ナショナルデパートというのは言わば様々なブランドの入る容器として存在していると思っているので、それ自体は水や空気のように無色透明であるという考え方です。前にもブログで書いたけど、オリジナルのPBが無数にある複合ブランド企業というのを最終的に目指すので、欧米タイプの自主企画型デパートという感じですね。店舗はしょぼいですが。そうした場合、企業としてどのようなCIであるべきかという答えがこの名刺に詰まっていたりします。

僕が名刺を出すということはその時点である程度メールや何かで接触が持たれているんでね、実際にお会いした時にまあ、名刺でも交換しときましょうかという流れになるだけで、そもそも僕はあまり人と会わないタイプなので。僕が名刺を出すというのは武士が刀を抜くくらいのことだと嘘をついてみるのも面白いと思いました。面白くないですよね。

で、話は戻って。中小・零細企業にとってデザインとは何か。それは「企業として成長するための必須項目」です。と言い切ってみましょうか。製品やサービスがどんなに画期的でも、営業がどんなに走り回っても、レイアウトのかっちりとしたパンフレットの与える好印象は作り出せません。製品やサービス、社員などの企業を構成する正員は個々の要素でしかなく、企業全体を包み込むようにして外気に触れているのはデザインの他にありません。これはBtoBでもBtoCでも言えることです。デザインって言うのは企業にとって下着や洋服みたいなものでね、生まれた時におむつを着けてもらうように、自分で会社を興したら自分の会社に安くても良いからきちんとした肌触りのお洋服を着させてあげましょうよ。

おれはそんな軟弱なものは必要ない、実力で業績を上げるんだ。という人もいるでしょう。まあ、業績は経営者の手腕で上げてもらうとして、会社の規模がでかくなったらどうでしょうか。おそらく知り合いから紹介されたデザイナーに依頼とかすると思います。で、だいたいそれで失敗します。起業時からデザインを取り入れた企業はデザインとともに成長します。中小・零細企業にとってのデザインとは、多少誇張して大きく見せる虎の衣、こんな風になりたいという行く先の道しるべだと思っています。長く連れ添うデザインと出会えたら、それは長く続く企業の一歩なのかも知れません。