アイデアのスープのレシピ

ナショナルデパートが作られる現場のレシピ

それぞれの出口を探し求めて

Twitterでちょっと出てた話しについて僕の考えを急いで書いていくのでサラッと読んでね。立場的にはいろいろ耳の痛い話しも出てくるかもだけど、そこはスルーで。

で、何の話しかというと、従業員、ここで言う従業員というのは主に飲食業、僕の属する場所だと製パン製菓、あとカフェとかもあるでしょう。それも個人の路面店とかの話しでね。この界隈だと大体年商で6000万が成否ラインと言われているわけで、その規模の店を設定商圏内に三店舗出すとだいたい安定的に経営ができるようになるというのがコンサル的な考え方ですね。

栄光の道を進む過程の最初に修行の時代というのがあってですね、月給10万円台の修行からスタートした時には右も左も分からんわけだ。で、長い修行の期間を経て出店資金を準備して自分の店を持って、成否ラインと言われる年商6000万を超えたらもう大成功なわけです。ただ、その修行コースを経てセンスや技術が卓越した人が栄光のロードを進んでいけるようになる。そう、成功している時点で数多くの業界で働く人の中ではトップクラスの何かを持っているわけだ。でも、それは成功した人の才能が開花したのであって、業界で働くみんなの才能が開花したわけではないのです。

技術がある人は技術の未熟な人に対して「どうしてこんなこともできないのか」と思うことが多いと思います。でも、世の中にはいろいろな人がいます。できない人も入ればできる人もいる、長く続く人もいればすぐに辞める人もいる。そして、また技術やセンスのある人と出会ったとしても、その人の人生は経営者であるあなたの人生とはイコールではありません。やがて退職する日も来るでしょう。で、また人を探さなくてはいけなくなる。そのままずーっとその繰り返しです。そしてそうやって新しい従業員を探し続ける経営者の姿を従業員はじっと見ています。

年収100万程度の修行からスタートして、自分の考えた自分の始めた店が年商6000万というのはドリームの世界です。で、ここから多店舗化への道をひた走り続けます。理由は単純です。ここまで成功したのだから、まだ自分には可能性があると思うわけです。思っているというか実際に成功を手にしたわけですから可能性は無限にあるでしょう。でもね、ここで忘れちゃならん事があります、大切なので言いましょう。無限に広がっていくのは経営者としての可能性であって従業員の可能性ではありません。

経営者の夢や目標が同時に従業員の夢や目標になっていればこれほど良いマッチングは無いでしょうね。でもそれは難しいと思います。特に製パン製菓で言えば、従業員がやっているのは単なる作業に過ぎません。たとえばウチの話しで例えると、ゆきちゃん一人で1日に20万円分のパンを焼く事ができます。しかも一人で接客もやりながら発送の準備もします。催事が立て込むと僕も製造に入ります。ゆきちゃんと僕の二人でMAXで100万円分のパンを焼いて出荷までします。その間ゆきちゃんは販売の接客もしていたりします。同業の方ならこの数字がけっこうキツい数字だと言う事が分かると思います。

ウチのスタッフはみんな製パン未経験なので最初はなかなかうまくいきません。たまに水を入れ忘れたり塩を入れ忘れたりします。そういう時は僕がカバーに入ります。決して怒ったりはしません。たぶんここ四~五年くらいは一度も怒った事は無いと思います。レシピや製法も毎日検討しています。よりスタッフに負担をかけないようにするためで、製法が難しいと失敗が多くなるからです。失敗が増えると自信を失う事につながります。本当は機械で作ればいいんですが、いや作りたいのですが、パンが大きすぎて入る機械がありません。

ゆきちゃんは将来海外で農業をするのが夢だそうです。実際いまもウチの仕事の他に自分の畑を持っていてJAに出荷したりしています。アカちゃんは小さなお子さんを持つ主婦の方です。将来はホームステイの受け入れをするのが夢だそうです。チハルちゃんはご夫婦共々東京出身だそうです。ご主人は美術関係のお仕事で忙しく飛び回られています。マユミちゃんは先月ニュージーランドに発ちました。ワーキングホリデーというのだそうです。ともみちゃんはもうすぐ赤ちゃんが生まれます。ご主人はブラジルに留学したいのだそうです。

僕の仕事はゆきちゃんやその他のスタッフが、自分の夢や目標を見失わず人生を進んでいけるように、ウチでの仕事がスタッフの人生の邪魔をしないようにしながら売上を上げる事です。みんながウチで働くのは「俺がスゴいからみんなウチで働きたがっているんだ!」と言うわけではないです。僕は単に禿げたデブです。みんなにとってウチで働くというのは「人生の寄り道」だと思ってます。ちゃんとした会社で働いて30代で年収1000万とか僕の周りの友人にはたくさんいます。でも、パン屋でパンを焼いている人で30代で年収1000万とかもらっている人っているでしょうか。

実際にパンを焼いているのは従業員です。経営者が全部のパンを焼いているわけではありません。でも、経営者は夢を見ます。それも成功すれば成功するほど夢は広がります。成功した後から夢が出てくるわけです。キャッシュがあるからやりたい事を探し始めるわけです。その夢には出口がありません。やりたい事があるのにキャッシュが無い、そういう時期は経営者と従業員は夢を共有できます。共通の出口があるからです。暗いトンネルを一緒に這い出ていこうという気概も湧くでしょう。ただ、出口の無い状態が続くと、経営者も従業員も夢を共有できません。

ひとはそれぞれ夢の入口と出口があるように思います。だからみんなのそれぞれの出口が見つかって幸せになれば良いと思います。そういう関係を保ちながらウチの売上も増えていけば良いと思っています。多分、僕もみんなと同じように出口を探し求めているだけだと思うので、僕は極力みんなの邪魔をしないように会社を大きくします。それぞれの出口を探し求めている時間が、みんなにとっての人生の意義につながるのだろうと思ったりします。