アイデアのスープのレシピ

ナショナルデパートが作られる現場のレシピ

600mm×400mm

最初に今のパンを焼いた時、まだウチはカフェをやっていて、今のように専用の什器は無かった。ホームセンターで買って来た集積材の板をカフェのカウンターの上に置き、その上でパンを切っていた。板のサイズは600mm×400mm。

パンの売り上げがほとんど無い状態なのにカフェを閉めてパンに専業することにした。なかなか売れず、いろんな場所で販売会を開いて回った。地元の朝市、友人の経営するカフェの軒先、ワイフの知り合いのパーティーの会場、友人の取引先のカフェ、場所さえあればパンとナイフと板を担いで何処へでも行った。その時の板のサイズは1200mm×600mm。段ボールを積んで土台を作り、その上に板を置いてパンを切った。

やがて東京に店を出し、百貨店の催事に呼ばれるようになった。実績が付くほどに売面は広がり、専用の架台を用意してくれるようになった。今では板のサイズも2700mm×800mmになった。板の材質も軽くて丈夫な桐に変えて専用に誂えた。

僕らは場所さえあれば何処へでも行く。今でも考え方は変わらない。道路の上に段ボールを積んで売っていた頃と何も変わらない。恵まれた立地でも無く、内装に凝るほど資金も無い。自分たちの商品を信じて売り歩くストリート系パン屋に、見てくれで誤魔化すという言葉は無い。

600mm×400mmのスペースさえあれば、僕らは何処へでも赴き、そこでパンと時間を共有することができる。洒落た内装も知名度も必要無い、本当にパンだけで勝負しているというのが僕たちの矜恃だ。