アイデアのスープのレシピ

ナショナルデパートが作られる現場のレシピ

例の件について自分なりに落ち着いたので少し書きます。

例の件というは昨年Twitterなんかで書いたんですが例の模倣がどうのという話しの事です。興味が無い人は読まない方が良いと思いますし、読んでも何の特にもなりません。ミモフタもない事が書かれていくと思います。

で、例の件というのは、僕がある仕事をやることになってですね、資料として集められた様々なレシピ本をパラパラと眺めていた時に発見したのがそもそもの始まり。パンのレシピを主なフィールドとされている料理研究家女史が、自著のレシピ本で生地に色をつけたカンパーニュを「アレンジカンパーニュ」と称して数色の展開させたものを紹介しているのを発見したことから始まったことでしてね、その色を出す素材の選定や色の種類の展開もナショナルデパートの四季のカンパーニュとまったく同じという惑星直列的な超絶の偶然の一致なわけで、これはさすがにマズいだろうという展開になったわけです。

ナショナルデパートが全国的に知られるきっかけになった「cafe&sweets」パン特集が発売された後にそのレシピ本は発売されていて、レシピ本の準備を始めていた頃はまだナショナルデパートも知られていなかったものがcafe&sweets発売後メディアに取り上げられることが多くなり、おそらく料理研究家女史もその手のレシピを出すことができなくなったのでしょうか、その後「アレンジカンパーニュ」というのを著作で紹介する事もほとんどなくなっているようです。

いろいろ人に聞いていると、その女史は有名シェフのアイデアをあたかも自分が考えたかのようにさらっと自著で紹介してしまう斬新な手法が売り物だったようですが、さすがにそれでは続かないと思ったのか今度は有名シェフに共著を持ちかけて黙らしてしまうという新しい懐柔方法を編み出した御仁でありますため、私なんぞ無名の田舎のパン屋では到底やり合えるタマではないという感じでございました。

で、ここまでは経緯です。本件において僕はもうパクっただのパクられただのという次元の話しを蒸し返したいわけではなくて、もうパクるとかどうでもいいのですよ、それより本件で僕が骨の髄まで染みて分からされた事があってですね、それをここで書いておきたいわけです。

この件についてはけっこういろいろな方面に相談したわけです。同じ業界の先輩方やそうでない人にもね。ただ、みんな歯切れが悪いわけですよ。「まあまあ、まあまあ」とみんな言うわけです。中にはTwitterやメールで「お前だってカンパーニュに色付けただけじゃねえかよ」とか「オリジナルなんて気安く言うもんじゃないよ」とか軽くdisられるという事になって、どうしてこういう展開になるのか子供の僕は分からなかったわけです。

時間が経って分かってきたのは、相談した人たちの多くがその料理研究家女史とお友達というロシアスパイの懐柔工作のような鮮やかなABC包囲網が完成していたわけで、お友達になってしまえば攻撃される事も無いわけですからなるべく業界に影響力を持つ人物への懐柔をしておいた方がいいというごく一般的な処世術がこの業界にもあるわけです。それは別に悪い事ではないし、生きていくにはいろいろあるでしょうし、関係から生まれる仕事の融通という面もあるかも知れませんし、メディアへの働きかけができる立場ならそういった便宜の供与もあるのでしょう。

で、僕はずーっと考えていたわけです。しっくりこない感じがずーっと残っていたわけです。で、答えが出ました。でもこれは本当に絶望的にミモフタもない結果だったんですがね。今回の件についてどうしてみんな料理研究家女史を弁護し支持したのか。それは、

「常に自分も何かをパクっているから」

という、どーしようもないことだというのが分かったわけです。この業界はヨーロッパ文化パクリ共同体のようなものがありまして、ヨーロッパの食文化を日本に広めるという価値観を背景にみんなで仲良く食い扶持を分け合って金を稼いでいるわけです。ですからオリジナルなものが日本にあったら困るわけです。オリジナルなんてあってはならないわけです。オリジナルを名乗れるのは同時に多数に情報を発信できる料理研究家やタレントなどであり、田舎のパン屋はそういった人たちにアイデアを供出するアイデアのプランテーションみたいなものでしかないわけです。

で、このことを痛切に感じたのは同業の人がTwitterで「オリジナルなんて気安く言うものじゃない」的なことを書かれていたのを読んだ時でね、このときは絶望しましたよ。ああ、この業界をリードする人たちもみんなこういう考えだったのかと。

で、僕はやっと気付きました。この件については僕が100%悪いのだと。この業界はヨーロッパのパクリをみんなで頑張る業界であって、オリジナルなんてあってはならない。オリジナルを追い求めてはいけない業界に、オリジナルを追い求め大切にする僕が入ってきた事がそもそもの間違いなのだと。なので反省しています。今後は一切オリジナルのものを創り出すようなバカな事はこの業界内ではいたしません。僕も今後は歯を食いしばってヨーロッパの猿真似をしてこの業界を盛り上げていく所存でございます。

で、当該女史は「しばらくパンばかりやっていたけどこれからはソムリエでいきます」的なことを発言しているのを見ましたが、もうパクるものが無くなったので欧米コンプレックスの情弱相手にソムリエ受験講座で一発カッパいでいこうかという腹づもりなのでしょう。日本でのヨーロッパ文化の浸透のためにぜひとも頑張って欲しいものです。応援してます。