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アイデアのスープのレシピ

ナショナルデパートが作られる現場のレシピ

アイデアのスープ

そこに狭い土地がある。もともと肥沃は言い難い土壌であって、一見平地に見えているが、そこらかしこに岩が積み上がり、乾いた砂地も散見される。耕せる面積はそれほどない。

そこに最初一本だけ太い木が豊かに葉を繁らせた。その太い木は100年以上その土地の主となっていた。その太い木の葉は陽の光りを浴びて輝いているが、そのおかげて日陰になった周辺の木々は育たず、葉の色は鈍く沈んで背の低いみすぼらしい群生となっている。

しばらくすると少し離れた場所にびっしりと枝を広げた新しい大樹が美しい実をつけ始めた。実は鳥がついばんで遠くの肥沃な土地に種子を落とし、そこで新たに芽吹き幹を太くし葉を繁らせ実をつけた。新しい大樹は瞬く間にその数を増やし、山を隔てた向こうの平地にも、海を隔てた向こうの大陸にも美しい実をつける大樹を増やしていった。

最初に葉を繁らせた太い木も実をつけたが、鳥はそれを好まなかった。鳥は美しい実だけを選んでついばみ遠くの土地に種子を運ぶ。最初に葉を繁らせた太い木はずっと100年以上その土地の主であったが他の土地には増えず、その枯れた土地でしか生きられない種となった。土地はどんどん枯れていき、周辺の痩せこけた木々もやがては根を張る生命力さえも失っていた。

そこに狭い土地がある。もともと肥沃は言い難い土壌であったが、100年以上そこに鎮座している太い木が魅力的な実をつけないために土地は荒れていった。鳥が実を運んだ大樹はいっそう繁栄し、最初に葉を繁らせた太い木はいつまでも死んだままそこに立っている。自らの葉で他の樹木に陽が当たるの塞ぐように。