アイデアのスープのレシピ

ナショナルデパートが作られる現場のレシピ

国内メーカー家電デザインのMUJI化とクイジナート化、そして機能省略への舵取り。

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BALMUDA The Gohan(左)と、MUJIの豆から挽けるコーヒーメーカー(右) 

いよいよバルミューダの炊飯器とMUJI(無印良品)のコーヒーメーカーが発売されるわけですが、この両プロダクト、一見すると何かデザイン変遷の大きな流れが見えてくるような気がします。

上の画像を見ると、私なんかは、あれ?MUJIの炊飯器の新しいモデルが出たんだ。とか、クイジナートの新しいコーヒーメーカーのデザインはスッキリしてていいね。とか第一印象で思ってしまいます。昔から調理家電を見てきた者としては、バルミューダのプロダクトデザインは無印良品化していて、無印良品のプロダクトデザインがクイジナート化(海外ブランドの傾向)しているのではないかと感じるんですよね。

 

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深沢直人氏監修の元、開発された無印良品の家電プロダクト

MUJIの家電はつや消しのオフホワイトで丸みを帯びたデザインが多かったので、バルミューダの炊飯器を見るとついMUJIっぽいなあという印象を持ちます。ただ、バルミューダは家電メーカーなので、カタチが機能から導き出されている要素も多く、MUJIのうように「ガワだけ無印」ということではないというのは使ってみても分かります。

バルミューダの炊飯器のフタの部分にステンレスの地を見せているのは、かまどや土鍋で炊いたごはんのおいしさを目指し、羽釜で炊いたご飯をイメージさせるに十分なのではないでしょうか。機能をデザインで表すというのはMUJIでは無かったことのように思います。

MUJIが採用していた、つや消しオフホワイトの丸みを帯びたデザインにプラス機能を感じさせる要素を加える。というアプローチは国内メーカーのひとつのデザインのカタチとしてこれからも増えていくと思います。既存の家電メーカーが気づかなかった「手触り」を標榜したMUJIが築いた家電デザイン。その傾向の上に乗っかっていくことでまた多くのパターンが生み出されていくというのは面白いですね。新興家電のMUJI化はこれからも続いていくと思います。

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バルミューダのキッチン家電は機能のフォルムを取り入れ、高さが揃えられてスッキリとして見える。

バルミューダのプロダクトデザインがMUJI化していると言い切りましたが、実際はそうではなく、機能から導き出されたフォルムを巧みに使って、一見して何の用途で使うのかが分かるというはバルミューダとMUJIのデザインの大きな違いではないでしょうか。

バルミューダは自社で開発も行う純然たる家電メーカーなので、テクノロジーから機能、使用感、利用シーンまですべての世界観をデザインに落とし込むことができます。一方、従来のMUJIデザインはすべてのものをMUJI化することでブランドの統一性を図った例だと思います。いままでにない家電デザインを世の中に提案したMUJIデザインを、バルミューダが機能とテクノロジーで完成させているような気がしています。

そしてMUJIも高機能化を実現させていく上でバルミューダと被らないデザインの傾向を打ち出さなくてはいけなくなりました。それが新しいコーヒーメーカーのクイジナート化であり、こういった機能をデザインで表現するというのは、なにもMUJIだけではなかったのです。

 

家電デザインのクイジナート化について

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Panasonicの調理家電「e-PROシリーズ」

まぜる、刻む、つぶす、泡立てる。基本的な調理の精度を上げることで、料理は、驚くほどに変わります。鋭い切れ味で引き出す、素材本来の鮮やかな色。使う直前に砕くことで、グンとふくらむナッツの香り。舌の上にのせた瞬間に旨味が伝わる、極上のなめらかさ。今まで引き出せなかった美味しさを、あなたの手で。プロも認める調理器、e-PROシリーズの誕生です。

これはPanasonicが発売する調理家電e-PROシリーズのコンセプトなんですが、ここで重要なのが「基本的な調理の精度を上げる」という今までの国内家電メーカーが目指さなかった「調理家電のプロ化」という重要な要素があります。まぜる、刻む、つぶす、泡立てる。という単純な機能にフォーカスし、精度を上げる。こんなコンセプトの家電、いままで国内で無かったと思います。

我々プロが使う機材はすべてが専門特化した単機能のものばかりで、ベーカリーなら、混ぜる、発酵させる、焼く、というひとつひとつが単一の機能しか持たない機械を複数設置して精度の高い商品(食べ物)をつくるという、簡易製造ラインに近い考え方です。オーブンレンジのように、焼く、蒸す、揚げる、温めるという複数機能がパッケージされた昨今の高機能調理家電とは一線を画する考え方だといえます。

そして、そのデザインも従来の白などのものとは違い、金属の質感に黒い操作パネルという、欧米家電メーカーの見せ方を踏襲しています。我々プロの使う機材はほとんどが腐食に強く洗浄のしやすいステンレス製なので、このe-PROシリーズの外観は金属の質感をみせることでプロの使う調理器具というイメージを再現していて、これも国内メーカーの新しいデザインの流れなのかと思っています。単機能で金属質感を多用、というクイジナート化がここで見て取れます。

日本国内のキッチン事情と、海外、特に欧米のキッチン事情では、そのスペースやデザイン、そして調理方法の幅に大きな違いがあるために、海外では調理家電の単機能とシンプルな外観が主流になり、日本国内では調理家電の複数機能化と室内インテリアにマッチする柔らかく優しいデザインが主流になってきたのではないかと考えています。

Panasonicのe-PROシリーズ、調理に拘る層でキッチンのスペースに余裕がある人たちには魅力的に見える一方で、スペースに余裕がなく、インテリアの統一性を保つ経済力がないと容易に手が出ないシロモノなのかもです。

そして、この背景が暗いキービジュアル、これは従来の国内メーカーではあり得なかった絵面だと思います。完全に海外、欧米の家電メーカーのビジュアルを意識していますね。完全に欧米化に舵を切っています。

panasonic.jp

追記:

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クイジナートってなんだよ、という方もいらっしゃると思うので、画像足しときます。ね、MUJIのコーヒーメーカーも、Panasonicの調理家電もクイジナート化してると思いません?私だけ?

 

あたりまえだった機能を切り捨てる

前出のPanasonicの調理家電が単純な機能にフォーカスしたのと同様に、MUJIもバルミューダも、従来はあたりまえに備わっていた機能を廃止して、大切な機能だけにフォーカスするというコンセプトを実践しています。それが冒頭で紹介した「BALMUDA The Gohan」と、MUJIの「豆から挽けるコーヒーメーカー」です。

詳しくは引用で紹介しますが、このふたつのプロダクト、非常にコンセプトが似ています。調理家電ですから目指す仕上がりを実現するために何をすべきか、ということがほとんど同じポイントで成されているわけです。そして、ここで重要なのが、両プロダクト共に、今まであたりまえに備わっていた機能を切り捨てています。それが保温機能。

それでは両プロダクトの特徴的な技術をちょっと見てみます。

MUJI『プロのハンドドリップを再現したコーヒーメーカー』

  • 87℃のお湯で抽出する
  • 30秒間蒸らす工程
  • 保温機能は20分まで

BALMUDA『エネルギーの使い方から見直した蒸気炊飯器』

  • 直火ではなく蒸気で炊く
  • 100℃を超えない温度
  • 保温機能は無い

両者ともに大事なのは「温度」だと思います。調理工程で重要な要素といえば「温度」と「時間」です。この制御こそが調理のキモであり、これからの調理家電はこの「温度」と「時間」をどのように制御してより美味しく調理するかがポイントになります。ですから「保温」という要素は必要無いわけです。できたての瞬間にMAXで美味しいものをつくるという、観点を変えれば新しいコンセプトにも感じます。

そして大きな共通点を挙げるなら、87℃でのコーヒー抽出や、100℃以下での炊飯という温度にフォーカスしているところです。MUJIはプロのハンドドリップを目指し、バルミューダはいままでにない方法を提案する。両者ともに温度にフォーカスしながらも、MUJIは従来ある最適な方法を忠実に再現し、バルミューダは今までにない解を電子制御によって可能にしたわけです。ここにMUJIとバルミューダの姿勢の違いが見て取れるような気がします。

そして、どうしてMUJIはこのコーヒーメーカーからデザインを一新したのか、その疑問については私の勝手な想像ですが、MUJIが家電の機能向上を図ると、仕上がり品がバルミューダと被ってしまうという懸念からではないかと考えます。勝手な想像ですが。

従来の国内の家電メーカーは機能は追求するがデザインは二の次というふうで、MUJIはそこに目をつけて既存製品にデザインという付加価値をつけてある程度の成功を収めてきたわけです。しかしそこに機能とデザインをすべて内製できる企業が現れて、従来の「デザインを乗っける」という手法が通用しなくなってきているのではないかと。

追われる側、このエントリーで言えばMUJIやPanasonicはプロフェッショナルの調理を家庭で再現する、追う側であるバルミューダは新しい調理方法を開発して個人利用向けにパッケージする、そこにデザイン傾向を当てはめると、プロフェッショナルをイメージさせるためにクールな外観を目指してクイジナート化し、新しい技術を家庭に浸透させるためには柔和なMUJIデザインを踏襲する。こういう感じなんじゃないかと思います。

1人で家電製品を開発しようとしている者として、こういったデザイン傾向の変遷は勉強になります。

 

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フラットカッターミル
平行に並んだ固定刃と回転刃が、豆を一粒ずつ挟んでゆっくりと挽きます。摩擦熱が少ないので、豆の香りを損ないません。

87℃の温度管理
抽出するお湯温度が高いと苦味が強く出やすいため、酸味と苦味など味のバランスと豆本来の香りを引き出すのに最適な「87℃」で温度を管理しています。

30秒間の蒸らし
豆の成分をしっかり抽出するのに必要な「蒸らし」の工程も、ハンドドリップと同じように行います。

斜めシャワーのドリップ
カップ数に応じた粉の量に合わせて、6つの穴から内側に向け斜めにお湯をシャワーします。これで、「蒸らし」で膨らんだコーヒードームの壁を崩さずに抽出を行います。

20分だけの保温機能
コーヒーは、長時間保温すると味が劣化してしまいます。挽きたての豆を丁寧にドリップしたコーヒーは冷めても美味しいですが、淹れたてを味わってもらいたいので、保温時間を短く設定しました。

www.muji.com

 

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逆転の発想
どうして電気炊飯器より、かまどや土鍋で炊いたごはんの方がおいしいのだろう。釜の素材が違うと言われてきましたが、例えば、ガスの火力に比べて電気炊飯器は約1/3のエネルギーしか使うことができません。バルミューダはおいしいごはんの秘密は釜の素材ではなく、エネルギーの使い方そのものにあると考えました。

新しい構造、二重の釜
分厚い釜は、それを温めるためのエネルギーが必要になってしまいます。少ないエネルギーを炊飯のためだけに使いたい。たどり着いたのは、釜を二重にして、その間を中空にするという方法。ここに水をいれて熱することで、炊飯中だけ、見えない蒸気の釜が出現します。

蒸気のちから
蒸気の断熱性は分厚い金属釜と比較しても数倍から数十倍。内釜全体を包み込んで、ゆっくりとした無理のない加熱が行われます。電気のエネルギーを使って「お米」を「ごはん」に変えるための、まったく新しい方法が完成しました。

優しく炊いて煮崩さない
BALMUDA The Gohanは、新しい構造と蒸気の釜によって、お米を優しく炊き上げていきます。100°Cを超えない自然な加熱でお米の表面を傷つけず、香りとうまみを米粒の中に閉じ込めます。

保温機能は省きました
保温機能は、どうしてもおいしさを損ねてしまいます。炊き立ても、冷めてもおいしいBALMUDA The Gohanは、保温機能を省きました。炊き上がり後1時間以内に食べきらない場合はおひつへ移し替えるか、冷凍保存してお楽しみください。  

www.balmuda.com