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アイデアのスープのレシピ

ナショナルデパートが作られる現場のレシピ

ブログにリンクを貼り続けたら自著レシピ本の新品在庫が完売しました。

冷凍アウトレットが復活です。

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ナショナルデパートの「四季のカンパーニュ」とライ麦のパン

ナショナルデパートの「四季のカンパーニュ」とライ麦のパン

 

というわけで、ブログにリンクを貼り続けたら、Amazon で自著のレシピ本の新品在庫が売り切れました。ブログってすごいですね。初版数千部なので、そんなに在庫は無いと思うし、でも、あんまし売れてないだろうから在庫がどっかにあるかもしれません。在庫は復活すると思うので買ってくださいね。

しかし、もっと早くからブログを再開して、重版がかかるように持って行けていれば良かったです。ちょっと反省。

 

 

不可解なキャリアが生み出す僕の世界観

初の自著がレシピ本というところが、秀島の人生やパーソナリティの不可解さをより深めているわけですが、この不可解さこそが、結果として自分の選択肢を広げることとなり、残りの人生で好きなことを好きなだけやれる力を手に入れる原動力となっています。

結果的に何をやっているのか不可解な秀島ですが、自著となって社会にデビューしたのは「パン屋さん」としてのキャリアだけです。そう思うと、僕のパーソナリティの根源には「パン」を作るオジサンというものなのかも知れません。

 

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レシピ本より、小麦中種の発酵の様子

 

どうしてレシピ本だったのか。ということを振り返ると、編集プロダクションの若き女史が熱心に動いてくれて実現に至ったわけですが、出版が決まったこの頃は、折しも出版不況が嘆かれ始めたころで、そして先の震災直後で世の中の行末も見えなくなっていたタイミングで、出版社担当者女史も、いまやらなければ実現できないという意気込みで始まったことのように思います。

 

シェフが家庭用にアレンジしたレシピ本も多数出揃った頃合いで、有名ブロガーの主婦の方たちのレシピ本も活発に出版されていました。しかし、このタイミングを過ぎた後、パンのレシピ本の出版は激減していきました。クックパッドの隆盛で、紙のレシピ本の存在意義が薄れてきた時勢も影響があったようです。

 

しかしそう考えると、田舎でシコシコ作っている無名なパン屋のレシピ本が大手出版会社から出版されたことも奇跡的なことで、しかも、それ以降はパンのレシピ本の国内出版の鈍化が進み、いまであればまず間違いなく僕のレシピ本なんて世に出ることなど無かったでしょう。奇跡が生み出したレシピ本と言えると思います。

 

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レシピ本より、ゴムヘラで生地をこねる様子。

 

レシピ本の内容はというと、いまで言うグランパーニュ(当時は四季のカンパーニュ)を家庭で作るためのレシピを網羅していて、しかも、手でこねるという煩わしさを排除し、ボウルの中でゴムヘラでこねるだけ簡単にパンが焼けるという、斬新な手法を取り入れています。このやり方で本格的なドイツパンまで焼けてしまいます。恐ろしき秀島の独自手法。

 

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レシピ本より、寺澤太郎先生の美しい写真たち。

 

レシピ本は全編が写真家の寺澤太郎先生撮影の写真で彩られ、僕のパンの世界を余すところ無く表現していただいています。パンを食べるものとして作り、撮るのではなく、ナショナルデパート、秀島の思い描く世界を表現するツールとしてのパンであることを、数々の写真の中に感じ取ることができます。

 

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レシピ本より、寺澤太郎先生の美しい写真たち。

 

いま考えれば、本当に奇跡の一冊だったのではないかと思います。家庭で焼けることを前提とし、写真では世界観を伝える。この両立こそがこの本の真意であり、もっとも大切にしていたことでした。レシピを考え、試作し、撮影し、テキストを書き、デザインし、そのすべての作業の記憶が、この本の素晴らしさをよりいっそう感慨深いものにしてくれます。

最近では、成功した経営者が自身の半生記やビジネス書や自己啓発本を、半ば自費出版のようなかたちで出版し、講演に登壇した際に配りまくるというのがよくあるそうです。経営者が本を出すということがひとつのステータスのような扱いをされているような気がします。

 

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レシピ本より、寺澤太郎先生の美しい写真たち。

 

ものを作る、ものを生み出す、という作業は、一般の方からすると、よく分からない謎の世界だと思います。頭の中に浮かんだイメージをかたちにし、ゼロから生み出し、完成させ、それを、人や社会に伝える。これは膨大なエネルギーを必要とすることです。

しかし、出来上がるのはたった一冊の本だったり、たった一切れのパンだったりするのですが、そういう、ほんの些細なものにでも、人の知恵や経験が詰め込まれて成り立っています。

ものを売る、金を稼ぐ、そういうことが大切だと連呼するメディアの切り口は、果たして人を幸せにするのか。もっと高みにある、良い物を作り、それを当たり前のように売るという、そういう本当の高みを目指して、これからも仕事を続けていかないといけないと、自分の心に問いかけました。

 

自分の初の著書がレシピ本で本当に良かったと、いまは感謝の気持ちでいっぱいです。ステータスではなく、この世に新しいものを生み出すちっぽけな存在として、自分の世界が本というメディアとなって流通したことは、他に代え難い貴重な経験です。この経験が、これまでも、これからも、僕の中の大切な気持ちを保ち続ける糧になっています。

この本の出版から後、日本郵政とのコラボレーション、東京駅100周年のコラボレーション、東京駅のお土産売り場でメインを張り、パリのル・ボン・マルシェでの販売し、ヴェルサイユ宮殿公認ブランドとのコラボを果たし、池田理代子先生ともご挨拶出来たこと、ほんとうに貴重な経験をさせてもらいました。

 

ビジネスとしての成功は半人前ですが、自分にしか体験できない貴重な「思い出」を心の中に残すことができました。人生の価値とは、自分にしか理解できない「思い出」をいかに多く紡ぎ、心の中に持つことが出来るか、そういう価値に気づくことができました。

田舎で鬱々としている個人経営の会社経営者が、こんなにも多種多彩な経験をさせてもらえたのも、 ひとえに支えてくれて、チャンスをくれた人たちのお陰です。ほんとうにありがとうございました。

 

 

で、Amazonを徘徊していたら、僕の祖父である「秀島達雄」の著書が見つかりました。祖父らしいお堅い内容の本です。国会図書館のデジタルでは読めるらしいです。

香港・海南島の建設 (1942年)

香港・海南島の建設 (1942年)

  • 作者: 秀島達雄
  • 出版社/メーカー: 松山房
  • 発売日: 1942
  • メディア: ?

 

これまでの人生で、たいした趣味もなく、プライベート時間も皆無という中で、自分の中だけの思い出をたくさん作れたのは、本当に自分の大切な財産です。仕事の成果、家族との時間、なんでも良いと思います。みなさんも、そういう人生最良の思い出をたくさん作っていってください。

 

無趣味のすすめ 拡大決定版 (幻冬舎文庫)

 

こちらもよろしく。

ナショナルデパートの「四季のカンパーニュ」とライ麦のパン

ナショナルデパートの「四季のカンパーニュ」とライ麦のパン

  • 作者: 秀島康右
  • 出版社/メーカー: マイナビ
  • 発売日: 2012/04/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)