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アイデアのスープのレシピ

ナショナルデパートが作られる現場のレシピ

秘密の花園

アイデアのスープ

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誰だって心の中に大切な思いを秘めている。社会の中で、交友関係の中で、家庭の中で、普段は誰もが自分の思いを隠していて、息を潜めて、時には我慢して、報われることもない自分の本当の思いを、心の中に秘めて生きている。

もしかしたら、自ら閉ざした自分の心の扉を、いつかは誰かがそっとノックして、そして静かに開いてくれるかもしれない。そういう期待を、果たされない淡い期待を、自分の人生の時間の中に託して生きている。

でも、人生の時間は過ぎていき、ふと気がつけば、誰も自分の心の扉をノックしてくれるどころか、心の扉の存在にも気づいてくれないことを知ってしまう。知るというのは残酷なことなのだと、その時に始めて真実の重みを感じてしまう。

 

こんなはずじゃなかった、私はもっと幸せになれたはず、私は他の誰よりも華やかな人生を送ることができたはず。

 

幼い頃から心の中のずっと奥に大切にしまっておいた、自分だけが知っている美しい花その花が姿を現すのは、学校からのひとりの帰り道、会社からのひとりの帰り道、家路につく間、その花が見えるのは決まって自分ひとりで過ごす時間。

大人になるということの意味を誰も教えてはくれない。大人になる方法なんて、学校では教えてくれなかった。私はどう生きたら良かったのか、これから先、私はどう生きたらいいのか。

 

家庭を持てばパートナーや子供と過ごす時間、ステディーがいれば楽しく過ごす時間、友人が多ければ悩みを共有する時間、自分以外の存在と時間を供することで、いつしか自分の心の中に隠していたあの花の、かすかに甘い匂いも、鮮やかな色彩も、過去のものだったのではないかと忘れることが出来る。ほんの少しだけ。

今を生きている人生は、自分の心を安心させるには足りるのだと、そう思えたことに幸せを感じる。心の扉は開いてはいないけど、それでも心を満たす何かに出会えた喜びに浸り、自分の人生は幸せなのだと思うことこそが、幸せなのだと気づく。

 

しかし、家庭も持たず、パートナーもいない、ステディーもいない、友人も少ない、そんな人にとっては、暗い部屋でスマートフォンを片手にひとりで過ごす時間が、私の心の中の、あの花の香りや色が、幼いころに見たあのきれいな花のトゲが、残酷に自分の心の無数の傷を開いて見せつけようとする、何かの罰を受けているかのような辛い時間を強いられる。

 

誰かが幸せにしてくれるなんてことなんてない。「しあわせ」は自分の心の持ちようでしか無い。このたった一つの真実に気付ける人は、実はほとんどいない。

誰かの人生の後を追い、誰かの人生を生きようとする。誰かと自分を比べ、悦に入ったり、嫉妬したりする。誰かに遅れを取れば焦り、誰かよりも先に行けば安堵する。

何を恐れているのか、それは「知る」という恐怖に怯えて過ごす日々。現実を見ることを恐れ、先延ばしにし、そしてまた無為に時間を過ごし、そして後悔する。過ぎた日は戻らず、ただ重ねた後悔の残骸が積み上がり、また真実を見ることを拒む口実となる。

 

誰だって心の中に大切な思いを秘めている。誰にも侵されたくない自分だけの大切な場所。それは、自分が一番輝く美しい花々に彩られた花園。心の中にそっとしまった秘密の花園。

心の中の秘密の花園は、いまも誰かを待っている。重く閉ざされた門が開くのは、期待した待ち人がやってきた時だけ。幼いころから誰もがそう思っている。

でも、いつまで経っても待ち人は来ない。待ち人が来ないことを、あなたは誰かのせいにする。待ち人が思った人と違うのだと、あなたは誰かをなじる。しかし待ち人はいつまで経っても現れない。なぜなら、秘密の花園が待っているのは、あなた自身だからだ。

それに気づくまでは、あなたはずっと自分の作った不幸の深淵に身を沈めているだけ。