アイデアのスープのレシピ

ナショナルデパートが作られる現場のレシピ

ブルーボトルコーヒーはUX(ユーザー体験)の設計を間違えた。

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ブルーボトル、買収されましたね。

www.nikkei.com

お題「コーヒー」 

ブルーボトル、サードウエーブコーヒーですか、人気ですね。オシャレで流行に敏感な若い人たちはこぞって行っていたのではないでしょうか。ここ数年でカフェを開業した若いオーナーたちは、少なからずブルーボトルの影響を受けていて、その結果オシャレなカフェやコーヒーロースターが増えて日本の街の風景も少し変わったような気がします。

で、なんでブルーボトル売っちゃったんでしょうかね。

日本進出時にいろんなメディアで書かれていたのが、投資家がこぞって投資したがり、結果4,500万ドルを調達して、そこから数年で株式の68%を4億2,500万ドルでネスレに売却したということは、時価総額6億2,500万ドル(約698億円)にまでなってたんですね。すごいですね。夢があります。

2017年に一気に倍の55店舗まで店舗を増やしているんですが、出資を受けた飲食系企業が突然店舗数を増やす理由はいくつかありますが、おそらく今回のイグジットが関係しているんだと思います。自力での成長が鈍化して出資者から突き上げられる。それはブルーボトルを買収したネスレにも言えることでしょう。ネスレも何か買い物をしないと投資家から突き上げを食らっていたようですし。

wired.jp

 

 

流行っているオシャレなお店の共通点

私もブルーボトルは一度行ったことがあるのですが、たっぷりの豆を使ってリッチな味のコーヒー、濃いコーヒーと言えば苦味や渋味を想像しますが、ブルーボトルのそれはコーヒーの要素が濃縮されたようなトロッとした味わい、そして量が多い。テイクアウトなんですが、リッドから溢れ出てくるんじゃないかと思うほどカップになみなみとコーヒーが注がれていました。熱かったですね。もう少しで清澄白河の道路にコーヒーブチ撒けるところでした。

お客さんもみなさんオシャレで、私のようなオッサンは場違いな気がしてちょっと恥ずかしかったです。しかし、オシャレなだけではお店が長続きしません。たとえ海外から進出してきたオシャレなブランドであっても、マスメディアに取り上げられて認知度が高くても、顧客満足度が低ければ客足が遠のいていきます。

で、ブルーボトルのコーヒーを飲んでてあることに気づきました。最近流行っている海外からの輸入コンテンツ系飲食店の共通点。ただ海外からやってきただけでは流行り続けることなんて、最近の情勢では困難です。流行っているお店には流行る理由がある。

この共通点を解説するのにちょうどいい例がこの4店舗です。

 

・ブルーボトル

・シェイクシャック

・スターバックス

・エッグスンシングス

 

そしてこれらのブランドには共通点があります。

さて何でしょうか。

それは。

 

・デザイン

・量が多い

・味が濃い

・少し高め

 

この4つの共通点です。

 

デザイン
内装やパッケージのデザインが整えられている。これは今の時代に流行る飲食店では必須の項目です。オシャレじゃないと客は来ません。「味よりも雰囲気」というのは笑い話ではなくなってきています。特にカフェなどの業態では、商品である食事や飲料よりもそこで過ごす時間にお金を払っているという意識が強いのではないかと思います。若年層の可処分所得が少なくなっている中で、いかに心地よく安価に時間を潰すかというのは消費の発生には大切な項目と言えます。オシャレな店に行っている自分というものをSNSで投稿することで承認欲求も満たせますので、まずはデザインが整えられている、店内がオシャレであるというのは必須です。

量が多い
前のデザインの項でも書きましたが、いかに安価に楽しめるか、という消費傾向の中にはどこかで「お得感」を期待しているとも言えます。カフェ業態でいうと、価格帯が同じなら量が多い方が良い、どうせ時間を潰すのなら、量の多いドリンクメニューを頼んでゆっくり時間を潰したい。見た目にもリッチな盛り付けならInstagramに投稿したときにも絵面が良い、いわゆる「インスタ映え」するということにもつながります。

味が濃い
これはかなり重要なファクターで、味が濃いというのはもはや現代飲食店では必ず押さえておかなければいけない項目です。ラーメンなどがそうですが、人間が死なない限界まで塩濃度を上げて、甘草や化学調味料で塩味のカドをとることで「濃厚さ」を作り出すことが出来ます。あとでのどが渇いて罪悪感をおぼえることよりも、食べている瞬間の脳に直撃する満足度には代えられないわけです。オシャレなカフェに行っているのに喫食の満足はラーメン二郎のガッツリ感と同様であり、オシャレなカフェでドリンクを飲んでいるのに脳が感じているのはラーメン二郎の化調(化学調味料)の入ったスープと同じなのです。

少し高め
前掲の4ブランド、純国産ブランドに比べて少し価格が高めに設定されています。この「少し高め」の価格設定が、「私はそのへんの鼻の低い日本人のブランドなんて行かないの、私は高級な海外ブランドを楽しむのよ」というプライドをくすぐるにはちょうどいいのです。純国産ブランドだと、「価格据え置き!」とか「大盛り無料!!」とかの訴求をしがちですが、オシャレな海外ブランドだと、量を増やすことで「グランデ」などのオシャレな呼び方に変えてもちろん追加料金を上乗せします。海外ブランドに対して少し高い金額を払う罪悪感を消すために、オシャレな内装、量を多くして、濃いめの味にするわけです。これらの項目を実装したところで、たいして原価に差は出ないので当然ですが利益率は上がります。

 

と、ここまで海外ブランドが流行る理由の4大項目について書きました。オシャレなお店で、少し価格が高いが、味が濃くて量が多いものを楽しむ、ということは少々高い価格帯であっても顧客のUXは向上するということです。

 

ブルーボトル最大のミス

さて、前出の4ブランドで期待されながらも自力での成長が鈍化して投資家の圧に押されて売却することになったブルーボトルだけ、他の3ブランドと大きく違うところがあります。コーヒーが主力だから?いやいや、スタバだってコーヒー出してます。フードが無い?いえいえ、少ないけどブルーボトルでもフードは扱ってます。しっかりと素材にこだわり、自家焙煎し、包装にもこだわり、コーヒーの抽出方法や提供方法にもこだわり、いまの日本の若いカフェオーナーはほぼ全員と言っていいほどブルーボトルの影響を受けています。しかし、ブルーボトルは自力での拡大を諦めました。ブルーボトルと他の3ブランドでは何が違うのでしょうか。それは、ブルーボトルがお大きなミスを犯したからです。

ブルーボトルが取り上げられている記事にこんなことが書かれていました。

 

我々はデリシャスネス、ホスピタリティ、サスティナビリティという3つのコアバリューを掲げているのですが、スタッフがそれぞれお客様が求めているものを考えることが本当の意味でのホスピタリティの提供につながると考えています。

 

ブルーボトルが3つのコアバリューとして掲げているもの、それが、

 

・デリシャスネス

・ホスピタリティ

・サステナビリティ

 

なんだか難しいですね、全部英語です。

でも、これ間違ってます。

客が本当に求めているものはこれです。

 

・砂糖(塩)

・脂肪

・ケミカル

 

ブルーボトルはこの三要素が圧倒的に不足しているんです。数百円〜千円で手に入るようなものに、素材の味なんて求めていません。バリスタと会話したがるような客は、スナックでママに絡むオッサンと同じです。店員と話したがる客は私生活が不安定で家庭以外に居場所(サードプレイス)を求めているだけです。

 

前項でも書いたように、海外ブランドにもとめているのは、少し高めの価格設定に罪悪感を感じながらも、脂肪と砂糖と濃い塩濃度で脳内麻薬をドバドバ出して脳を揺さぶり、多幸感を味わいたいから来ているのです。それならラーメン二郎に行けばいいけど、自意識が過剰だから海外ブランドの飲食サービスを選択して、インスタ映えする写真をSNSにアップするために来ているに過ぎないのです。

 

客が欲しがってるのは安価に手に入る麻薬

f:id:kocb:20170919181904j:plainシェイクシャック


オシャレなお店で、砂糖(塩)・脂肪・ケミカルを効率的に摂取して脳内麻薬をドバドバ出す。これが顧客満足と書きました。 砂糖や脂肪は直接脳に働きます。感性がどうとか、素材がどうとか、ホスピタリティもサステナビリティも関係ありません。脳を揺らした者が勝ちです。ボクシングと同じです。

「ホスピタリティ」とか「サステナビリティ」を謳う食のビジネスは「情報食品」とも言え、そのもの自体の満足度よりは取り巻く情報、たとえば「西海岸のいつもの味」や「こだわり」とか「カラダに優しい」とか創業からのストーリーなわけですが、そういった情報をありがたがる一部の客は、舌で味わうよりも頭で考えて、店のストーリーの中に自分が含まれていることに満足を感じているのです。そしてその証拠をSNSに投稿するのです。

しかし、それでは効率が悪い。だから流行っている海外ブランドは効率的に脳内麻薬をドバドバ出させる方法を思いついたわけです。しかも同時に承認欲求をも満たす方法を。おしゃれカフェが流行るには承認欲求と脳内麻薬がキーワードです。オシャレなお店でインスタ映えする写真を投稿し、脳の中は脳内麻薬でジュルジュルになっている、その多幸感こそが継続性を実現させているのです。客が欲しがっているのは安価で手に入る麻薬なのです。

そういえば、ある飲食店経営者からこんな台詞を聞きました。何店舗も出店し、利益を元手にいまでは不動産王です。氏の経営する飲食店で出す肉じゃがはコーラよりも糖度が高く、食べると気持ち悪くなります。しかし、氏は自信たっぷりにこう言いました。 

 

味が薄いというクレームはあるが、甘過ぎるというクレームは一件もない。

 

さて、どう思いますか? 

 

脳内麻薬と笑気ガスで脳の自由を奪い取れ

f:id:kocb:20170920235238j:imageエッグスンシングス

 

さて、客の求める要素は砂糖と脂肪とケミカルと書きましたが、ケミカルとは何のことを言っているのか。ラーメンで言えば化学調味料ですが、カフェで言うとエスプーマで使用する「亜酸化窒素」になると思います。スペインの三ツ星レストラン「エル・ブジ」でも多用されていた、ソースなどをふわふわの泡のように加工する器具です。生クリームをホイップするときにも使えるので、使用範囲は広いですね。このエスプーマで使用するガスが「亜酸化窒素」通称「笑気ガス」です。麻酔ガスの一種ですね。

 

ヒトが吸入すると陶酔させる作用があることから笑気ガス(しょうきガス。英語、laughing gas)とも言い、笑気と略されることもある。また麻酔作用もあるため、全身麻酔など医療用途で用いることもあり、 

 

このエスプーマでホイップされた生クリームはガスを多く含んでいて口当たりがよく、ボリュームも出ますので見栄えも良く、クリームの保存が楽で手軽なため海外ではよく使われています。私も昔カフェを経営していた頃はこのエスプーマを使っていました。個人輸入でガスのカートリッジを買っていたのですが、このガスを吸引したときに得られる陶酔感を求めて一部の若者が乱用して事故などを起こして規制されていました。現在では登録制で国内でも購入することが出来ます。

 

 

まあ、実際に食べる段階ではガスは抜けているとは思うのですが、エスプーマで射出した大量の生クリームには、もしかしたら微量の亜酸化窒素が残留していて、食べたときに少し気持ちよくなるのではないかと海外のディーラーと話していて、彼は「hahaha!このガスカートリッジを使えばみんなHappy!!だよ!!!」と言ってました。

砂糖と脂肪、それに笑気ガスを加えれば鬼に金棒です。もう完全に脳の自由を奪い取れます。ホスピタリティ?サステナビリティ?そんなもん必要ありません。砂糖と脂肪で脳内麻薬をドバドバ出させておいて、興奮状態にしておいて、笑気ガスで多幸感を感じさせて軽い酩酊状態にさせる。もうこれで客はあなたの店にサステナブルです。意味は分かりませんが。

 

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人類最強のベバレッジはスターバックス

f:id:kocb:20170919181913j:plainスターバックス

 

で、ここまで書くともうお分かりだと思いますが、デザインに優れ、量が多く、味が濃く、少し高め、そして、砂糖と脂肪とケミカルを効率的に摂取できる商品を世界に拡散し、世界を制した一大勢力といえば、そう、スターバックスです。

フラペチーノには大量の砂糖、そして強烈な甘味をキレよく感じさせるためにクラッシュアイスとブレンダーで混ぜ合わせ、脂肪分のかたまりの生クリームをトッピングして脳内麻薬をドバドバ出させながらも、後味スッキリ。なぜならクラッシュアイスの冷たさが甘みの感じ方を鈍感にするから、プラス亜酸化窒素でホイップされた生クリームは軽い口当たり。これなら罪悪感も半減。

ロゴマークが描かれたカップを片手にオシャレな店内をバックにインスタ映えする写真をSNSにアップして、マックブックを開いてFacebookでいいねをチェックする頃には、亜酸化窒素で多幸感に包まれながら意識の高いコメントを返し、飲み終わる頃には酩酊状態。最高です。

 

ブルーボトルコーヒーはUXの設計を間違えた

ブルーボトル、買収されました。ニュースサイトやブログでいろんな理由や考察が書かれています。買収したのがブルーボトルの対極にあるネスレということは、ネスレにしてみれば新規市場の開拓であり、ブルーボトルにしてみれば自力での展開に無理が見えてきたという想像は、間違ってるかもしれません。でも、ブルーボトルは明らかにUXの設計を間違えました。

口から食物を摂取するという行為は人間に残された動物的な行為です。綺麗事を言ったって、横文字で難しいことを言ったって、最後は脳を揺らした者が覇権を獲るのが飲食業界です。頭で考えるよりも、カラダが反応してしまうのが経口摂取や性的行為による脳内麻薬の放出に支配される人間が動物的である証拠です。

カフェなど飲食業態におけるUXは、デリシャスネス、ホスピタリティ、サステナビリティをコアとして設計されるものでなく、脳内麻薬でビショビショに「脳を揺らされた」サスティナブルなドランカーをいかに増やすかという方針で設計されるべきなのだと思います。

しかし、こうやってオシャレカフェの商品開発を見ていくと、完全に脳を揺らすための設計がなされているというのは間違ってないと思います。ブルーボトルはコーヒー界のアップルと言われていましたが、ただコーヒーをいれてるだけですから、スティーブ・ジョブズがジョン・スカリーを引き抜くときに言った「このまま一生砂糖水を売り続けたいのか、それとも私と一緒に世界を変えたいのか?」というエピソードからすると、こだわりや御託を並べてコーヒーを売って、最後は同業界のメジャーに身売りするブルーボトルは、アップルとは程遠いのではないかと思います。

ブルーボトルに影響を受けてカフェを開業しちゃった日本の若い人たちは、はしごを外された感じでしょうか。ご愁傷様です。

ブルーボトルはどこまでいっても「西海岸のいつもの味」程度のものなのです。

 

 

 

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