ものを作るということについて、いろいろと考えるところがあります。
こういう仕事をしていると、たいして儲からないのにどうして物を作り続けるのか、と揶揄されることは多くあります。どうして他人が「儲かる」か「儲からない」かということに対してここまで興味があるのか、その理由は「儲かる」か「儲からないか」という観点が、すごく簡単で分かりやすい基準だからだと思います。
「儲からない」モノ作りの人たちを馬鹿にするのは簡単なんですよね。自分は別に買うわけでもなく、見たことも触れたことも無いわけです、ウチで言うと食べたこともないものを批判する。これはネットの特徴だと思います。今は
買っていない、読んでもいない、食べてもいない、観てもいない、聴いてもいない、使ってもいない商品のおすすめブログ2ヶ月目レポート - かんそうブログ
というコンテンツが人気になるくらいなので、それはそれで時代の流れというか、仕方がないことなのだろうと僕は思ってます。
ミンネの炎上について
で、タイトルにもある「ミンネの炎上」ですが、ちょっと現場を追うことができなかったのであるハンドメイド作家さんのブログを引用させてもらいました。
minnneが炎上した理由、それはminneが出稿した広告のコピーに「ハンドメイド作家の作品=安い」とリードするような表現があったということで炎上したようです。炎上を受けて当該広告はすぐに取り消したみたいですが。
ハンドメイド作家さんたちのタイムラインには以下の様な意見が溢れたと書かれています。
そして、タイムラインに溢れる批判ツイート。
* 屈辱的
* 残念
* ハンドメイドは割高
* 馬鹿にされたみたいで、すごく嫌
私が眺めていた短い時間だけでも、みんなこんな意見。
それはそうですよ。
だって、
「ハンドメイド=安い」
の連鎖から脱却しようと努力して、
「ハンドメイドは良い物=良い値段」
という方向へシフトさせている人ばかりなのだから。
その販売サイトで業界最大手のminneが、
「ハンドメイドは安い」
だなんて、喧嘩売っているようなもの。
それまで個別に存在していたハンドメイド作家のひとたちが、「ハンドメイド」のイメージをアップさせようと努力されている中で「ハンドメイド=安い」とも取られかねない文章が書かれたら、それは心中穏やかではないかもしれません。
そしてこのブログエントリーの最後はこう締めくくられています。
安売りする所は崩れやすいので、他の販売方法も模索していこうかと思っています。
こういった言及は、他のハンドメイド作家さんのブログにもよく見られる表現です。「ここは売れないから他のサイトに移籍しようかな」とか「もう◯◯に移籍することを考えています!」とかいう内容です。
これは、ハンドメイド作家のひとたちが、モノを作って世の中に問う、という立場と同時に消費者の立場や、サービス利用者としての自分の立場を強く意識していることの表れだと思っています。
ハンドメイド作家と工芸家の違いとは。
モノを作り、それを売る。簡単に書いてしまうとそれだけのことなんですが、それがものすごく難しい。まずは知ってもらわなければいけない、そして作品を良いと感じてもらわなければいけない。その先に、購入していただくという最後の難関が待っているわけです。そのハンドメイド作家と購入者をマッチングさせるサービスがminneであったり、Creemaであったり、tetoteであったり、iichiであったりするわけです。
いっぽう、こちらの引用の一文を読んでください。
私が苦心して海外市場を開拓しているのは、仕事を続けたいからです。そのための資金が必要なのでそうしているのです。お金が欲しいから物を作るのではありません。物を作り続けるためにお金を稼ぐのです。
モノを作り、作ったモノに対して全責任を負い、技術を極め、新しい技術を習得するのに寝る間を惜しむ、そういうモノを作ることを生業とする人が、モノを作り続けるためにお金を稼ぐという考え方です。
この一文は、Yahoo!知恵袋の中で、芸大に通う学生からのとある質問に対して工芸家の方から寄せられた回答です。この工芸家の方は回答の中でこうも書かれています。
これから工芸家として進まれるなら、
①作品が他の作家と差別化できる内容があること、
客観的商品価値が高いこと、(自己満足ではダメです)
本当に良い物、群を抜くレベルの物を作ることです。
ただ、これは並大抵なことではありません。
②市場を海外に求めること(英会話と、高いコミニュケーション能力は不可欠)。
自ら海外に出向いてお客様と接し、その要望を作品に反映させる。
という路線をお薦めします。
Yahoo!知恵袋の内容は以下のリンクで全部読むことができます。ぜひ、モノ作り、作家活動を目指す若い方は読んでおいて損はないような気がします。
Web上のハンドメイドマーケットと言われるサービスの中で、前記の工芸家といわれる範疇の方の出品もたまに見かけます。ガラス作家の方が自分の作品をWeb上のハンドメイドマーケットに出品して販売する。そういう、これまでは販路に窮していたような作家さんの受け皿として素晴らしく機能していると思っています。
でも、作って売る、という行為は、ネットが普及する前からリアルで行われ続けたことです。個展を開き、ギャラリーと契約し、顧客を増やし、DMを送付し、収入を得て、そしてより一層の創作活動に励む。これがP2Pのサービスとして簡易化されたのが、minneを始め、いま流行しているWeb上のハンドメイドマーケットと呼ばれるものです。
作家活動を続けるということは熾烈を極める日々の連続です。目に見える競争があるわけでもなく、ただ、作品が良ければ売れるというものでもない、続けていくことが本当に難しく、専門の大学や学校を卒業しても作家としての収入で食べ続けていける人の割合はほんの一握りだと思います。そして名を上げて、活動を続けていけるのはもっと少ない。
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語弊があったら申し訳ないですが、ハンドメイドマーケットに並ぶ作品(商品)の多くが、クリエイティブというよりもアッセンブルなのではないかと考えています。パーツを組み合わせる、組み上げる、組み立てる、そうやって作られているものがハンドメド作品として広く流通する。もちろん原料の加工から行う作家さんもいらっしゃいますが。
たとえばとんぼ玉のピアスがあったとき、多くのハンドメイド作家の方はとんぼ玉は手作りでも、金具は市販品を使うと思います。それを「この金具では世界観がまとまらない」と金具さえも手作業で作る人はいるでしょうか。おそらく作品に対してそこまでこだわる方はあまりいらっしゃらないような気がします。
今後も「作りたい人」は増えていくのかもしれません。いろいろな情報があふれ、作り方や売り方までサポートが充実している。ビジネスにおいても「メーカーズ」の出版を契機にますますモノ作りが注目されていくことだと思います。
自分の思い描く未完のものを形する、自分の作りたいものを作り続ける。そのためにお金を稼ぐ、という考え方に立っていらっしゃる作家さんも多くいらっしゃいます。
そういう人たちを救う手立てとして、現在のハンドメイドマーケットの次のサービスが求められているような気がします。ちょっと自分でWebサービスを作ってみようかな。
最後に、前出の工芸家さんが書かれていた文章の一部分を引用させてもらいます。僕のように40を過ぎてから事業というものの考え方に気づいた者としては、誰に何をいわれようとも、自分が思ったことを成し遂げるまでは諦めない、という強い心、強い信念こそがモノを作り続けるということにおいて一番大切なことなのではないかと思っています。
貧乏でも成功できなくても夢にしがみついて努力している人を「正直イタイ」と見下すことは人として悲しいことです。幼稚でもあります。ひょっとしたら、その姿は明日のあなた自身かもしれないのです。
では仕事に戻ります。
一連のハンドメイドマーケットについて理解を深めるためにダウンロードしたアプリをご紹介します。 ハンドメイド作家の方々の作品を見て、これからのモノ作りの幅は一層広がると僕は感じました。
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プチ起業、ママ起業、ハンドメイド作家が嫌われる本当の理由。 https://t.co/21LpvvCpU6
— ビデジマ (@k_room) 2015, 11月 2