◯◯産の◯◯を使いましたとか、自家農園の◯◯を使いましたとか、そう謳われた手作りの食べ物が我々のようなガチなプロの作った商品の倍以上の価格で売られている。
消しゴムほどの大きさの焼色の薄いクッキーが1個300円、素材にこだわったという小指の先ほどの大きさの焼き菓子が1個200円、なんだかよく分からないが一見普通のおにぎり弁当が1,800円。そういう世界があるということを知って、プライスカードの価格が一瞬ジンバブエドルなんじゃないかと錯覚した。
インフレが起きている
おそらくここだけ戦争でも起きて物資不足でインフレが起きているんだろう、だから露店に商品を並べているのかと思ったら、ここは弾丸飛び交う戦争紛争地帯ではなくて、普通のマルシェだった。
ちょうど昨日ブログで書いた内容と被った現実を見て、一瞬、ウソなんじゃないかと目を疑った。たぶん、僕らのような店持ちがあの価格設定であの商品を出したら、食べログで人格否定され、ブログで死ねと書かれます。
「◯◯産の◯◯を使いました」と謳う食べ物の多くが、実際には「◯◯産の◯◯を使ったんですけどこうなっちゃいました」という「こうなった」系であることが多く、じゃあ、実際に最終製品に加工したあなたは一体どういう味にしたかったんだい?と聞きたくなるんだけど、まあ、それは人それぞれですからね。
技術の未熟さが素朴とか手作りの味と言われ、作り手の目指す味が曖昧になってることが自然な味と言われる世界が眼前に広がって、ちょっとカルチャーショックを受けた。 ファッションフードと呼ばれるものの進化形がそこにあって、その集大成が日本におけるマルシェなのかと。そう感じた。
冒頭の画像は今日届いたパン屋さん向けのフリーペーパーの巻頭特集。こういう「パン好き主婦」の厳しい消費者目線に晒されながら、日々パンを焼いているお店が大半だけど、一方では自然派や手作りを標榜して、形の悪い、焼色の悪い、クープの開ききっていないパンを市価の倍以上の価格で取引している地下の闇市場も存在している。
手作り焼き菓子やハンドメイド作家の作品がジンバブエドル並にインフレを起こしている現状を見て、僕はこれからどうしたらいいのかと、遠い空をただ眺めているだけなんだけど、ひとつ思ったのは、インフレ政策の切り札は国内消費の総マルシェ化なのではないかと。
だからどうってことではないんだけど、路面店、商業施設のテナント、百貨店催事、卸し、いろんなビジネスシーンを見て来た者として、この先の消費傾向の多様化は、本当に予測が難しいなと思うのでした。
すでにハンドメイド作家の方法論も出ているみたいですし。

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