君は何者かになろうとしているんだね。
インフルエンサー?
人生の成功者?
人も羨む有名人?
事業で成功した大富豪?
不労所得で悠々自適の資産家?
情報商材を買い漁り、ビジネスセミナーに足繁く通い、有名人のオンラインサロンに入会し、手弁当でイベントボランティアの手伝いをする。人生を変える存在と出会えたんだと君は目を輝かせて言っていたね。
僕はそんなに君と親しくはないから、君が目を輝かせて熱弁をふるう様を黙って見守っていたよ。出会ってから1年経つかな、君は何も成してはいないし、何も始めてはいない。
君は、君が師匠と呼んでいる人物が扱う商品を営業して回っているようだね。それは君が本当にやりたかったことなのかな。
最近やつれて見えるよ。
会う度に名刺が変わるね。
名刺を何枚も持っていることがステータスだと思っているようだけど、名刺なんてただの紙切れなんだよ。何の役にも立たない。
ビジネス書がたっぷり入ったKindleを読み耽っているね。勉強熱心でいいね。
自分でも電子書籍を出しているんだってね。その電子書籍はいくら売れたのかな?その電子書籍の出版のノウハウを教えてもらうセミナーの受講費はペイできたかな?
SNSでインフルエンサーからいいねを付けてもらったことを喜ぶ君の瞳はキラキラしていたよ。なんだか僕も嬉しかったよ。
がんばってほしい。でも少し心配。
有名人やお金持ちのパーティーの手伝いで奔走しているみたいだね。充実しているかい?セミナーの参加費が必要だからと実家の両親に無心をしているようじゃないか。そんなに稼ぎが少ないのかい?
お金がないのにオンラインサロンのイベントの手伝いを無償でやるんだね。
君を顎で使っている君が師匠と呼ぶ人物は、どうしてそんなにお金を持っているのに、どうして君はそんなにお金を持っていないんだい?
君はお金で買っているんじゃない、同じ時間を共有し参加しているんだ、と思うかもしれないけど、お金を払っている時点で君はただの消費者であって、参加した気分を味わう代わりにお金と時間を提供しているだけなんだよ。
お金を払って夢を見ているんだね。
自分の時間を他人に搾取されて満足を買っているんだね。
僕は何も言わないよ。
君がそれで満足なら。
でもね、
憧れたら負けなんだよ。
憧れるということは、負けるということ。
憧れるということは、奪われるということなんだよ。

- 作者: カールシファキス,Carl Sifakis,鶴田文
- 出版社/メーカー: 青土社
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